雑居ビルで起きた未曾有の火災
東京都新宿区の明星56ビル火災は、死者44人、負傷者3人を出した火災事故ですが特筆すべきは他の災害事例とは異なり規模の小さい雑居ビルと言う所です。
平成13年の9月におきました。
当時この建物は地下2階地上5階建てのビルで、建築面積は83㎡との大きさでした。
被害が大きかった階層は3階と4階で、出火元と見られているのは3階のエレベーター付近と見られています。
ビルに入っていたテナントは主にキャバレーやゲーム店でしたが、火災があった当日は週末だった事もありビル内に人は多くいました。
出火時間は深夜1時頃と見られていますが、この時営業中だった階層が地下2階、1階、3階、4階でした。
出火原因は放火か
その出火原因に関しては調査の結果今では放火の可能性が高いと見られています。
歓楽街の中の建物と言う事もあり、心持ち穏やかではいられない事になった人の犯行なのかもしれません。
最初に火事に気付いたのは地下1階のテナントの支配人で、これは地上に上がった際に気づき階下の従業員3o人を始め全員を避難させています。
その上の地下1階では当時無人だった事もあり被害に会う人は居ませんでした。
地上1階では従業員2名が業務に当たっていましたが、外の騒ぎに気付き避難しています。
その上の2階では営業時間外で、清掃員が3名仕事をしていましたがこちらも避難に成功しております。
その際に階段より上を見たら既に煙で真っ暗だったと言う事ですから相当火の手は3階を中心に回っていたかもしれません。
3階と4階に被害が集中
特に3階は出火したフロアと言う事もあり、結果的に被害者を出してしまう事になります。
3階にはお客15人、従業員5人がいましたが逃げ出す事に成功したのはこの従業員の内3名にとどまってます。
4階にはお客11人、従業員16人がいましたが3階と合わせて皆焼死してしまっています。
この規模の雑居ビルの火災としては結果的に大きな被害となってしまいましたが、当時おの後にアメリカ同時多発テロが起きた事により報道も縮小して行く事になります。
放火ではないかとみられている一番の要因は、ガスメーター本体がボックス内で直立した状態で発見されたことによります。
火の勢いによってメーターと接続されたガス管から外れたのではと言う見方もありますがこれには不審な点も多く今でも判然としていません。
防火対策の不備
ビル内に階段が一つしか無い事も被害拡大の大きな原因の一つとされていますが、エレベーター付近から出火したため実質の逃げ道はこの階段しかありませんでした。
エレベーターと階段は同一の区画内にあったことから3階と4階の犠牲者は逃げ道が無かった事になります。
ちなみに避難出来た3階の従業員3名は窓からの脱出でした。
この階段の途中に大量の可燃性物品が置かれていた事も問題になりました。
これが延焼拡大に繫がった事は明白でもあり、他にも防火扉がありましたがこちらも付近に荷物が置かれていたため有事の際に閉まらなかった事が確認されています。
火災報知機も作動せずベルが鳴らなかった事も判明し、火災発見に至った経緯は3階の窓から人が落ちたと言う救急の要請が一方にありました。
この時点で火災はビル内で大分進行していたと見られ3,4階の人は既に退路が断たれていたと想定されます。
後に判明した事ですが各テナント内で専任の防火管理士がいなかった事も分かっています。
これは、人が往来する建物では本来誰かが講習等を受けて防火・防災管理士として従事するべきですが怠って居た事になります。
明星56ビル火災も出火原因は放火と見られる公算が大きいですが、それとは別に防火対策の怠慢も大きく関係しています。
これを機に階段付近に物を置かない等の防災対策は認知された様に記憶しています。