昭和48年に発生した大洋デパート火災
日本のデパート火災の中では最大規模に分類されるのが熊本の大洋デパート火災です。
事故が発生したのは昭和48年の11月の事で、被害としては地下1階地上9階建ての面積約13,000㎡を焼失した物です。
死者は104人、負傷者67人を出した事故でありその後のデパートの防災を再度考えさせられる物になりました。
人が沢山集まる場所はこの様に火災で大惨事になるケースは多く、似たような事故は日本国内でも幾つもありますが共通しているのは初期の消火活動の失敗や通報の遅れがあります。
出火元と出火原因
出火元は階段室からとなっていますが今でも出火原因は不明です。
当時大洋デパートでは大規模な改装工事を行って居て、該当部は北側にあたります。
その兼ね合いで一部倉庫が使用不能になっていたため、本来3階に置くはずのタオルを段ボール箱に詰め込み、そのままC号館内と呼ばれるデパート内の部分2階から4階にかけて置いてあったようです。
出火原因が不明である以上どう言った理由で火が付いたのかは分かりませんが、本来燃えるはずはないとされていた場所からの出火になります。
タオルと段ボールと言う二つの燃えやすい素材が大量にあったため、瞬く間に火は広がりそのまま他の階にも燃え移って行く事になります。
従業員の通報は適切だったか
最初に火災に気づいたのは3階で勤務していた女性従業員で、黒い大量の煙が階段室から発生しているのを確認した後売り場に戻り、大声で火災を知らせました。
その後電話交換室に連絡をしたのですが、取り次いだ先の従業員は以前店内の事件事故にまつわる連絡は状況判断を慎重に行った後と指摘を受けていたようで、119番に連絡が行く事も無く上司に連絡をするべきか迷っている間に、電話交換室まで煙が入ってきたため逃げてしまっています。
その結果館内放送も行えず、被害を拡大させる原因となってしまいました。
ここを見る限り有事の際には適切な判断を下す事が如何に大事かと言う事が見て取れます。
大洋デパートの消防設備の不備
当時このデパートに設置されていた消防設備は拙く、地元の消防員からも再三にわたって指導を受けていたようです。
特に消火器や屋内消火栓は設置こそされど正常に稼働する状態ではなかったようで、こうなると初期消火を行おうにも限界があります。
併せて従業員への防災訓練も実施した事がなく、出火元の階段室付近でも上手く消化活動が出来なかった事が確認されています。
ちなみに3階は寝具売り場になって居た事もあり、階段室付近の炎によりガラスが割れた後、吹き込んで来た酸素で火は大きくなり3階に燃え移っています。
館内放送も出来ず消化も出来ない状況のまま出火から10分後に火災に気づいた客も居たらしく、裏を返せば従業員による組織的な避難誘導も行われなかった事になります。
不運だったのは階層工事に伴い、一部の通路が通行不可になって居た事です。
この様に様々な要因が重なり大規模な被害を出す事になってしまったのです。
やはり普段から防災に関する訓練を定期的に行う事と、有事の際は従業員を始めとして適切な行動を行える体制にして置くことが大事です。
消火設備も定期的に確認をして、不備があれば都度新しい物にするなどいざと言う時を想定しておくことが減災に繫がります。